コラム

亜鉛メッキの大気中における耐食性

亜鉛メッキの耐用年数はその使用条件によって大きく異なります。使用条件が同じ場合には亜鉛の付着量に比例してその耐食性が良くなります。大気中における耐食年数はその付着量と亜鉛の腐食速度から割り出すことができます。
計算式は「耐用年数=亜鉛付着量(g/㎡)÷腐食速度(g/㎡年)×0.9」です。0.9というのは、メッキの90パーセントが腐食した時点でメッキ層が失われたと判断する判定基準に基づく数字です。

この時の腐食速度を知るために暴露試験という試験が行われます。暴露試験とは製品をわざと風雨や直射日光などに曝して劣化していく経過を調べる実験です。亜鉛メッキの耐食性は、風雨や湿度、亜硫酸ガス、海塩粒子量などの影響を受けるため、ある特定の地点での耐用性を知りたい場合にはその地点で暴露試験を行いその実測結果を待たなければなりません。

これまでに様々な条件のもとで暴露試験が行われ、代表的な環境の下での耐用性についてその耐用年数が推測されています。その数値によると、耐用年数が短い順に、重工業地帯、都市地帯、海岸地帯、田園地帯、山間地帯、乾燥地帯となっています。重工業地帯では一般に硫黄酸化物の排出量が多いため亜鉛メッキの耐用年数も短くなります。ただし、最近では公害規制や燃料が重油からガスへと変化してきたことにより硫黄酸化物の濃度が低くなり亜鉛メッキの耐用年数も伸びているようです。
海岸地帯では稀にですが亜鉛メッキが激しい腐食を起こすことがあります。激しい腐食を起こすのは主に常に海水の飛沫を受けるような海岸線のすぐ近くに置かれている場合で、それ以外では特殊な地形であったり海塩粒子の影響を受けるような特殊な条件により激しい腐食を起こします。海岸地帯の腐食は表面が白色の腐食生成物の皮膜によって覆われるという特徴があります。これは海塩粒子の影響で、海塩粒子が濃い場所ほど厚い皮膜に覆われます。この皮膜はかなりの防食作用があるため、最初は濃い海塩粒子によって激しい腐食を見せた場合でも年月が経過するとともにその腐食の速度は減少します。こうしたことから亜鉛メッキは海岸地域においても有効な防食方法と言えます。